夏の夜

2003年7月17日
 いつもより少し遅い仕事帰り、地下鉄の階段で見覚えのあるサマーセーターを見つける。
 私は、階段を急ぎ足で駆け上がり、その背中をトンと叩き、驚いて振り返るその人に言った。
「いつもこんな時間なんだ。お疲れ様」
 突然背中を叩いた犯人が誰だか判った友人は、ホッとした表情を浮かべこのちょっとした偶然に微笑んでくれた。
「あれ、そのワンピース出来上がったんだ」
 彼女は私の着ていたワンピースを指差して問う。
「冬頃には完成させてたんだよ、でも時期が早すぎて着れなかったから」
 このエンジ色で光沢があり角度によっては黒く映る和風の生地は、彼女と一緒に出かけたときに見立ててもらった物で、ワンピースが出来上がったら見せるようにと言われていたものだった。
 この偶然により、労せずしてその約束は果たされた訳だ。
 しきりと出来を褒めてくれるのに照れくさくなりながら、私は友人が着ているサマーセーターが一緒に買い物に行った時に買われた物であることが、なんとなく嬉しかった。
 ベージュのスカートに良く似合っている。
 駅から家までの短い距離を、何気ない話をしながら二人並んで歩くのは楽しかった。
 そんな、夏の夜の出来事だった。

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